Low gauge mohair knit
これまで継続してリリースしてきたローゲージのニット。
そのシーズンのテーマに合わせて色を選び、ときにはカーディガンタイプも作ったりと、ブランド設立以来お付き合いをしていただいているニッターさんの協力のもと、長きにわたり作り続けているブランドを象徴するアイテムの一つです。
今回リリースするタイプは大胆な色使いに目が行きがちですが、これまでと同様に内包的な要素にも拘りました。
まず糸には非常に収穫量の少ない生後1年未満のアンゴラ山羊の原毛を使用。
適度な太さと染めたときの発色の良さが特徴で、今シーズンは様々なカラーに染め上げた糸を選びました。
本来出会うことのないような色同士を使用し、ピッチの太さや配色のバランスをアレンジすることによってオリジナリティのある柄作りを意識しています。
そして網組織は継続して3ゲージの天竺編みの針抜きを採用。
編まない目を作ることによって隙間が空き、縦にラインが入ったような目の大きさが特徴です。
また、通常の編み地に比べ横方向への伸びが一層大きくなるため、ボリューム感のあるシルエットと体を優しく包み込む着心地を兼ね備えています。
さらに仕上げに編み地をソーピングすることによって毛足を出し、滑らかな手触りと風合いの良さを与えることによってこのニットは完成します。
今回この記事を書いている途中、当時作った今はもうボロボロになってしまった私物のこのニットを眺めながらふと懐かしい景色が頭に浮かびました。
それはとある冬の朝、アトリエに出勤した時のこと。
カラシ色のタートルネックのカットソーに杢グレーのスウェットパンツ。
謎のスポーツメーカーのスニーカーを履き、頭には深く被った黒のニット帽。
そして、全体を覆うように最後に上から重ねて合わせていたのがこのローゲージのニット。
これは今でも鮮明に記憶しているデザイナーの漆山がミシンを踏んで作業していたときの姿です。
当の本人はきっと忘れているであろうこのスタイルは私の中でのベストルックの一つ。
こうして今も作り続けている以上、この記憶と記録がいつか更新される日を密かに楽しみにしています。
皆さんにも是非自由にきていただきたいニットです。